ベトナムが急速に進む高齢化を新たな成長源と捉え、「シルバーエコノミー」の育成に本格的に乗り出している。アジアでも屈指のスピードで高齢化が進む同国では、60歳以上の人口が2025年には全体の14%を超える見通しで、10年以内には高齢社会に突入する。この人口構造の変化に対し、政府は従来の福祉負担というイメージを転換し、高齢者を社会と経済を支える重要な資源として位置づけようとしている。
ハノイで開催されたシルバーエコノミー国家フォーラムでは、政治局員でホーチミン国家政治学院のグエン・スアン・トァン院長が、「高齢化を悲観するのではなく、成長を押し上げる資産として捉えるべきだ」と訴えた。トァン氏は特に、介護サービスの高度化、医療・リハビリ体制のアップグレード、生活の質向上に向けた仕組み作り、そして経験豊富な高齢者が自発的に労働へ参加できる環境整備が不可欠だと強調した。
また、トァン氏は在宅ケアや高齢者向け住宅、質の高い看護サービス、デジタルヘルス、リスキリングや生涯学習といった分野が今後の成長領域になるとし、技術革新と民間投資がシルバーエコノミーの要になると指摘した。一方、党書記長トー・ラム氏は、高齢者の孤独問題を国家的課題として捉えるべきだと述べ、子どもだけでなく高齢者も社会の不可欠な存在であると強調した。
国会副議長レ・ミン・ホアン氏は、高齢者を「知識と経験の巨大な宝庫」と表現し、彼らを活かすことで経済と社会の双方が強化されると語った。政府には、シルバーエコノミーの国家戦略の策定、GDP貢献度の目標設定、年齢に優しいインフラ整備、高齢者向けビジネス支援など、体系的な政策の構築を呼びかけた。
フォーラムに参加した専門家からは、高齢者の労働参加を支える柔軟な雇用制度やスキルトレーニング、介護関連企業への税制優遇、高齢者向け観光や文化センター、デジタルプラットフォームへの投資など、幅広い提言が上がった。さらに、都市インフラやデータシステムを高齢者が利用しやすい構造へ転換する必要性も強調された。
会場では、高齢者がパートタイムや相談役、地域ネットワークを通じて若い世代に知識を伝える取り組みが、社会全体の活力に繋がるとの声も多く聞かれた。人口構造の転換を悲観せず、アクティブで意義ある老いを促進し、「黄金の秋」と呼べる社会を築くことこそ、今のベトナムが目指す未来だ。














