香港が中国本土と南米の主要港と新たな「パートナーポート」関係を結び、世界の貿易環境が揺れ動く中で物流とサプライチェーンの強靭性を高めようとしている。李家超(ジョン・リー)行政長官は、広西、遼寧省の大連、そしてチリのサンアントニオ港との連携を正式に発表し、これらの港が香港の政策方針と密接に結びつく戦略拠点であると強調した。国際海運の要衝として中国本土と世界をつなぐ香港にとって、オープンで国際的な貿易秩序を支えるパートナーを得ることは重要な意味を持つ。
こうした提携の背景には、地政学的緊張の高まりや貿易政策の不確実性がある。航路計画や船隊運用、在庫管理など、海運や航空、物流産業は多方面で影響を受けており、企業は急速に変化する環境に対応する必要に迫られている。李氏は、こうした逆風の中でも市場拡大と多角化によってリスクを吸収し、技術を活用することでコスト増を部分的に相殺できると述べた。
財政長官の陳茂波(ポール・チャン)氏も別の会議で、地政学的対立や貿易障壁の再編が航路に変化をもたらしているものの、貿易フローそのものが弱まるわけではないと指摘した。特にアジア域内のコンテナ取扱量は世界平均を上回る伸びを示しているという。
今回の港湾提携は、従来市場に加え新興市場との結びつきを深める香港政府の広範な戦略の一環でもある。特に中国の「一帯一路」構想に関わる国々との協力は、香港にとって新たな商機をもたらすと期待されている。今年のアジア物流・海運・航空会議では中央アジアや中東に焦点を当てた特別セッションも設けられ、各国代表が将来の展望を語った。
香港貨主委員会主席のウィリー・リン氏は、今回の提携が地域戦略に基づいた極めて重要な動きだと評価している。海と鉄道をつなぐロジスティクスネットワークにより、香港が取り込める市場を大幅に拡大できるほか、大連港の提携はグリーン燃料への優先アクセスを確保する狙いがあり、サンアントニオ港との連携はチリ産サクランボの低温物流(コールドチェーン)を強化する目的があるという。チリ産サクランボの約半数が同港を経由し、その6割が香港を通じて中国本土へ向かうため、この連携は供給網の安定化に直結する。
港湾の物理的機能に加え、香港はデジタル化でも大きく踏み込む。李氏は、来年1月にポート・コミュニティ・システムを導入すると発表し、AIやブロックチェーン、クラウド技術を活用したリアルタイムでの貨物追跡とデータ連携を実現するとした。これにより、貿易金融や通関プロセスの効率化など、新たなビジネスチャンスが生まれると期待されている。
さらに、低空域経済という新領域にも注力する。複雑な運航シナリオを扱える上位版の規制サンドボックスを導入し、物流分野を中心に新しい価値創出を後押しするという。また、香港はグリーン海運燃料のハブ化にも力を入れており、本土で生産される世界最大規模のグリーン燃料を国際取引の中心として取り扱うためのインフラ整備を進めている。
物流業界向けのESGロードマップも公表され、中小企業を含む企業全体の競争力向上が期待される。李氏は、こうした取り組みが香港を国際海運、物流、航空分野でのレジリエンスを備えた中心拠点として強化すると締めくくった。














