観光業が国内総生産(GDP)の約12%を占めるベリーズは、豊かな自然とメキシコやアメリカに近い地理的優位性を持つ。しかし、観光を支える基盤となるインフラの未整備が、今後の成長の足かせとなっている。政府はこの課題を克服するため、空港や港湾の整備、観光地域の交通アクセス改善、さらには金融制度改革や労働市場の拡充といった包括的な取り組みを進めている。
2024年、ベリーズを訪れた宿泊観光客(ホテル滞在者)は50万人を超え、前年比18%の増加を記録した。これはカリブ地域でも際立つ成長率だ。しかし、その大半がベリーズ・シティの唯一の国際空港を経由しており、同市の宿泊施設は需要のわずか20%程度しか受け入れられない。国全体としては宿泊能力に余裕があるものの、人気観光地との距離やアクセス手段が課題となり、観光客の滞在を制約している。加えて、航空便の発着枠も限界に近く、今後の観光客増加に対応するには空港ターミナルや航空路線の拡充が不可欠だ。
こうした課題に対処するため、政府は新たなインフラ投資を進めている。メキシコからの短期滞在客に対する国境手数料の撤廃、人気リゾート地サンペドロ島での新空港建設、南部プラセンシアでの国際空港構想、ベリーズ港の近代化計画などがその一例だ。また、メキシコとグアテマラを経由してベリーズを結ぶ「トレン・マヤ」構想は、地域全体の交通・観光ネットワークを強化する可能性を秘めている。
金融面でも、銀行は高い流動性と資本を有しており、観光インフラ拡張への融資余地がある。しかし、多くの中小企業にとっては依然として資金調達が難しく、政府と中央銀行は企業の正式登録促進や担保資産の拡大など、融資アクセス改善に取り組んでいる。
さらに、経済成長の鍵を握るのが労働力の確保だ。ベリーズでは労働参加率がパンデミック前の65%から2024年には57%へ低下し、特に女性の就業率が男性より著しく低いことが課題となっている。女性の労働参加率は約50%にとどまり、男性の約75%を大きく下回る。この格差を解消できれば、長期的にGDPを20%以上押し上げる可能性があると推計されている。
政府は教育機会の拡充や賃金格差の是正、女性の失業率改善を目指すほか、子育て支援や保育サービスの整備を進めている。質の高い保育環境と柔軟な労働制度が整えば、より多くの女性が労働市場に参入し、経済基盤の強化につながるだろう。起業支援や職業訓練の推進もその一環であり、持続可能な経済成長を支える重要な柱となっている。
観光インフラの整備とともに、金融・労働両面での改革を進めるベリーズ。自然と人材の潜在力を最大限に生かしながら、持続的で包摂的な成長モデルを築こうとしている。同国の挑戦は、観光依存型経済の限界を超える新たなステージへの転換点となりうる。














