韓国・慶州で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の場で、シンガポール、チリ、ニュージーランドの3カ国が「グリーン経済パートナーシップ協定(GEPA)」の交渉を正式に開始した。協定は持続可能な航空燃料、カーボンクレジット、再生可能エネルギー証書、気候関連の貿易措置など、低炭素社会への移行に関する幅広い分野での協力を目指すものである。
シンガポールのローレンス・ウォン首相は、今回の交渉開始を「国際貿易の新たな節目」と表現し、これまで対立するものとみなされてきた経済成長と持続可能性が、技術革新によって両立可能になってきたと語った。彼は「貿易はグリーントランジションを支える重要な手段であり、物資や技術、資金を国境を越えて循環させることで、持続可能な発展を加速させることができる」と述べた。
3カ国はすでに2024年11月に「貿易とグリーン経済に関する共同作業部会」を設立し、貿易と気候変動対策を同時に進めるための最適な枠組みを検討してきた。その成果を踏まえ、今回のGEPA交渉では、各国の気候政策と経済戦略を結びつけ、環境関連ビジネスの促進を図る。
シンガポール貿易産業省(MTI)は声明で、「地政学的な変化や各国の気候公約が企業活動に新たな優先課題をもたらしている」と指摘。今後は企業が環境規制や市場の変化に対応しながら、持続可能な成長の機会を見出すことが求められるとした。
ウォン首相は、持続可能な航空燃料の普及が脱炭素化に大きく貢献する可能性を強調。また、国境を越えたカーボンクレジット取引の推進や、環境政策と整合性を持った貿易関連措置の調整を掲げ、「共通のルールと基準を設けることで、環境関連の財やサービスの流通を促進し、グリーン経済への移行を加速できる」と語った。
GEPAの実現により、シンガポール企業には新たな市場機会や雇用が生まれ、持続可能な産業分野の成長が期待される。ウォン首相はさらに、「シンガポール、チリ、ニュージーランドはいずれも小国だが、革新的な国際協定を主導してきた実績がある」と述べ、過去に3カ国が主導して誕生した「環太平洋戦略的経済連携協定(TPSEP)」が後に「包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)」へと発展したこと、また「デジタル経済パートナーシップ協定(DEPA)」を世界で初めて締結したことを挙げた。
「今回はその協調精神をグリーン経済に応用する時だ」とし、官民の知見を生かしながら新しい発想で交渉を進めるよう呼びかけた。ウォン首相は最後に「私たちは手を取り合うことで、貿易を“善の力”に変え、経済成長と気候変動対策の両立を実現できると確信している」と述べた。














